ブラック企業を辞めて派遣社員になり、定時で帰れることに戸惑った話
ブラック企業と俗に言われている会社に勤めている方は、「いまどき雇ってもらえるだけマシだよな」とか「この程度のブラックなんてどこの企業にも多かれ少なかれあるだろう」と思っていらっしゃることとと思います。
また「この会社を辞めても次の就職先を探すのが面倒」だったり「どこの企業にいってもどうせ似たりよったりなんじゃないか」と思ってしまうことも本音だと思います。
何より思うことは「ブラック企業でも、無職よりはまし」だということを自分自身に言い聞かせているのではないでしょうか。
確かにそのとおりではあります。
私の以前に勤めていた会社もそうでした。
今回は私がブラック企業を辞めて派遣社員になり、定時で帰れることに戸惑った話をしたいと思います。
入社した時はよかったが社長が変わってブラックな雰囲気に・・・
入社して最初の頃はどちらかといえば働きやすい職場でした。
この会社に入社できて良かったと思うことも多々ありました。
ですが、社長が交代したこと、また、企業が急成長し始めた頃から、ブラックな出来事が多発するようになりました。
2週間に企画書10本という無理な仕事量
まず、正社員たちは2週間に1度、10本の新企画書を提出しなければなりません。
2週間に10本。
これはかなり労力を要します。
ですが、このご時世に従って、残業は20時までという規則がありました。
とてもでないですが、この時間内に10本の企画書を作成するのは困難です。
ですが、朝の出勤時間に関しては会社はノータッチという体制をとっていました。
9時出社なのに6時に出社して9時にタイムカードを押す社員たち
定時は朝の9時。
でも殆どの社員たちは始発で出社し早朝6時から仕事を始めます。
そして9時前となる8時50分台になるとタイムカードを押すのです。
つまり約3時間の早朝勤務は皆当然やるべきものという風習ができあがっていました。
私ももちろんその1人でした。
期日までに10本の企画書ができなかった場合は、社長はじめ役員全員の前で暴言を浴びるはめになります。
残り1本がどうしても間に合わなくて、手抜きで作成しても、そんなものはすぐに見破られるのです。
どうにか質の高い10本の企画書を完成させるために皆必死でした。
有給休暇を使うことは極悪非道なこと
また、この会社では、有給休暇を使うことを極悪非道のような扱いとされており、お子さんの入学式のたった1日も休ませてもらえないという女性社員が泣いていたのを見たことがあります。
インフルエンザで39度を超える熱を出しながらマスクで顔を覆って茫然とした状態で出社していた同僚も見たことがあります。
今でいう「リフレッシュ休暇」などがある会社とは、全く別次元ともいえるべき勤務体制でした。
そんな中で、私は辞めるべきかどうかずっと悩んでいました。
バックレる社員たち
この会社では、ある日突然、退職の意も告げずに、行方不明のように去っていく社員が少なくありませんでした。
私も朝起きて会社に行くのがつらすぎて、このまま無断欠勤、退職という道を選ぶべきだろうかと何度も何度も思いました。
というのも、この会社では、通常のように「今月末で退職します」と上司に告げると、社長室に呼び出され、何時間も説教と引き留めが待っているのです。
その中には「君の才能をかっている」「次の人事異動では昇進を考えていた」等とおだてるような内容もあり、その呼び出しにかかってしまうと、半分くらいの人が「やっぱり頑張ります」と退職の意を翻してしまうという現実があったのです。
うつ病の一歩手前になって辞めることに
そんな中で私は、神経がまいってしまい、心療内科に通うようになりました。
うつ病などの大きな病気とは診断されませんでしたが軽い安定剤を処方され、それを飲まなければ会社に行けない、出勤できないという事態に陥っていったのです。
また、直属の上司とソリが合わず、上司に名前を呼ばれるだけで呼吸が激しくなったりと、今、思うと既に末期症状に近かったと思います。
そのときに「心を病んでまでやらなければならない仕事って何だろう?」とふと思いました。
確かに私の30代後半という年齢では、再就職は難しいと思いました。
もし仮に再就職先が見つかっても、どこの会社にも嫌な上司、嫌なルール、ブラックな業務は存在しており、私はまたその会社でも神経を病んでしまうのではないかと思いました。
だったら、一応長年在籍し、見知った顔ぶれと仕事をし続けるほうがマシではないか?と思ったのです。
たったそれだけが、私をその会社に引き留めていた理由だったと思います。
ですが、私はその会社を辞めました。
きっかけ、と呼べるものは特になかったです。
ある日、朝起きたとき、「もう無理」と、ただ思いました。
そのまま無断欠勤をし、退職届けと保険証などを郵送しました。
派遣社員に転職したら定時退社に戸惑った話
次の再就職先では派遣社員として就職しました。
正社員から派遣社員というギャップはあったものの、次の会社では決して前職のようなブラックな業務は行われませんでした。
逆に、「これでいいの?」と思うくらい定時に帰ることを会社全体で推奨する風習があり戸惑うほどでした。
また、上司が部下にむかって「さん」づけで呼ぶこと、怒鳴ったり罵倒の声が社内で全く聞こえないこと、台風接近のニュースがあると、全社員早めの帰宅を促すなど、あまりに優しい会社の体制に、最初は驚いてばかりでしたが、だんだんとそれが普通の在り方なのだと感じるようになりました。
正社員から派遣社員になったことは確かに大きな痛手です。
ですが、勤務時間とお給料を考えると、逆に派遣社員になってからのほうが年収は上がりました。
そして何より、心療内科に通う必要はなくなり、安定剤も飲まなくてよくなり、朝起きるとただただ辛いと思っていたのが「今日は何を着ていこう(洋服)」などと明るい気持ちでいることができました。
もしあのままあのブラック企業に勤め続けていれば、私は100%、体も心も壊れていたと思います。
仕事をしていればある程度の我慢や頑張りは必要です。
でもそれが、薬に頼らなければならなくなったとき、その我慢や頑張りは、無用です。
まとめ
やってはならないことになると思います。
転職も確かに厳しいです。
なかなか思い通りの職に採用されることは少ないかもしれません。
ですが、朝起きてせめて「今日も頑張ろう」と明るく前向きに考えられる仕事であり職場であってほしいと思うのです。
今も、あのブラック企業はあのままの体制を貫いているのでしょうか。
仲の良かった同僚ともすっかり音信普通になってしまい、実態を知ることはできませんが、あのままあの会社で働き続けている人たちは、今の私のような爽快感は一生得ることはないのだろうと思うと胸が痛みます。
ブラック企業は、決して治るものではないからです。